シミュレーション技術開発室

研究トピックス

  • 複雑現象解析技術の開発
  • 原子力材料の脆化モデル開発
  • 福島環境動態研究
  • 量子シミュレーション技術の開発

| 複雑現象解析技術の開発

福島第一原発の廃炉作業や、新型炉の設計においては、原子炉構造材料や燃料などの物性値が必要となりますが、事故時の高温環境での振る舞いは実験が困難なため、これを最新の計算科学技術を用い、互いに影響しあう様々な要因をモデル化することで評価する研究を行っています。

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・原子炉格納容器内部のコンクリートへのセシウム吸着を調べるため、セメントに対するセシウムの吸着メカニズムを調べた結果を示しています。精密な第一原理計算をもとに機械学習分子動力学ポテンシャルを構築し、大規模な計算によってコンクリート中のセシウムイオン拡散機構を解明する研究を行なっています。

| 原子力材料の脆化モデル開発

大規模な第一原理計算や分子動力学シミュレーションを用いて原子力材料の脆化の原因となる、粒界面や転位、照射欠陥の特性について原子スケール、フェムト秒スケールの実験では観察できないダイナミクスや相互作用を明らかにし脆化機構を解明する研究を行っています。

 
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・金属粒界面の空隙に水素が入り、さらに空隙を広げるという過程を繰り返すことで粒界面が破壊されるという新たな破壊メカニズムを第一原理計算により発見 (M Yamaguchi, et al. ,Computational Materials Science 156, 368-375)

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・六方晶金属の転位が拡張したまま応力によってすべり面を変える機構を第一原理計算により発見(M.Itakura et al., Phys.Rev.Lett. 116, 225501 (2016))

| 福島環境動態研究

最新の計算科学手法を駆使し、福島県における放射性セシウムの今後の推移や被ばく影響を評価する研究を行っています。

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・ 三次元空間線量評価システム「3D-ADRES」を開発し、衛星写真、地形及び標高データなどリモートセンシングデータを用いて福島県内の任意の地点の3次元モデルを作成し、最新の知見に基づいた空間線量の計算を行っています。右図では実測で観測されている森林周辺の局所的に高い空間線量や舗装道路での低い空間線量が計算で再現されていることを示しています。  Map imagery (C) DigiGlobe Inc., NTT Data, Google & Zenrin 2018

| 量子シミュレーション技術の開発

核燃料や超伝導体など、電子同士の相互作用が強い物質ではその効果を物性評価に取り入れることが必要ですが、それには膨大な計算量となる量子シミュレーションが必要となります。我々はこの計算を機械学習などを活用することで劇的に高速化する研究を行っています。

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・機械学習による量子シミュレーションの高速化。物性計算に必要な位相空間でのサンプリングの模式図を示しています。通常はわずかに異なる状態を次々と作っていき、その都度膨大な計算を行ってサンプリングを行いますが、サンプリングに必要な量子計算の結果を機械学習し代理モデルを用いて位相空間の遠く離れた場所を次の状態の候補として選び、その後に厳密な量子計算を行い状態を移ることでサンプリングの効率を劇的に向上できます(NAGAI et al. Physical Review B, 96 161102.)。右図は機械学習によって得られた分子動力学ポテンシャルを用いて、通常の量子計算では計算が困難な超伝導体の有限温度におけるフォノン計算を行った例を示しています。

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